上級救命講習の筆記と実技の試験テスト効果測定に合格できる方法
上級救命講習(東京や札幌などの一部の自治体では上級応急手当講習とも)の後半にある
効果測定の準備の方法について読者の方達から質問を多く頂いているのでお答えします。
実際に受験した実技と筆記のテストの内容をできる限り細かく再現してお伝えすることで
これから上級救命講習を受講する予定の方達にとって少しでもお役に立てれば幸いです。
但し、こちらの記事では2021年11月13日(土)に北海道北広島市で著者が受講した上級
救命講習について紹介していて他の自治体での講習とは異なることを予めご了承下さい。
上級救命講習のメニューは受講する自治体毎に少しずつ違ってたりします。それに伴って
実技と筆記の試験の問題も多少変化することになり、それを踏まえて参考にして下さい。
因みに北広島市では上級救命講習は年にたった1回しか開催されず、しかも2021年は折り
からのコロナ禍で9月一杯まで緊急事態宣言が出されていて中止の可能性すらありました。
著者は仕事で必要な為に8月くらいからずっと『北広島市でなんとか上級救命講習を受け
たい!』と考えていて、最後まで諦めないで情報を追っていてようやく受講できました。
講習のテキスト
今回の講習で配布された『応急手当講習テキスト 改訂5版』は『JRC 蘇生ガイドライン
2015』と『改訂5版 救急蘇生法の指針2015(市民用・解説編)』を用いて編集されて
ます。実はその改訂版の『JRC 蘇生ガイドライン2020』が既に公開済みです。そして
2021年になって1年は経過しているので『応急手当講習テキスト 改訂6版』が近いうち
に作成される予定であると消防署員の講師の方が仰っていました。つまり上級救命講習
の内容と実技及び筆記の効果測定の中身が近日変化する可能性があり、ご注意下さい。
このテキストは45ページあり、無料で受講生に配られました。更に上級救命講習自体も
料金が不要で、実質的には往復の交通費だけで修了証を得ることができて大満足でした。
筆記の効果測定
消防署員の方達のご都合で午後になってから先に筆記テストがありました。これは午前中
に講師の方がテキストの説明で『ここは出題されます。少し表現を変えたりして必ず出る
ので注意して読んでおいて下さい』という部分を20箇所教えて下さいました。筆記試験は
全部で20問出題されたので、効果測定に出る箇所を事前に全て伝えてもらえていました。
問題用紙はA4サイズが2枚で表面と裏面に印刷されていて、解答用紙はA4サイズが1枚で
表面のみに印刷されていました。テストの終了後に問題用紙と解答用紙を一緒にして回収
されてしまったので現物はお見せできません。また設問は全部で20問で、制限時間は特に
決められていず、全員が解き終えたのを見て終わりとなりました。体感で15~20分程度
で、さらに筆記試験が始まる前に『講習のテキストやメモを書いたノートなどをカバンに
しまって机上に出さないで下さい』とかアナウンスさえ全然無くて、ゆるい感じでした。
出題された設問は四肢択一で『下線部の内容が適切なものを選べ』という問題が10個で、
『下線部の内容が誤っているものを選べ』などの設定は無かったです。それから『下線部
の内容が正しければ○、誤っていれば×をつけよ』との問題が10個出されました。以下で
記憶を頼りに、できるだけ実際の設問の内容を再現しておきますので参考にされて下さい。
『突然、心臓や~といいます。』の文章が出ると言われたので下線を引きながらカッコで
囲っておきました。これは『~ができる応急手当のことを救命処置という』と○×の形式
で出て、○が正解でした。救命の連鎖の図は『4つの項目の順序が大切で出されますよ』と
伝えられて、4つの流れを入れ替えた選択肢が4つ出題されて適切なものを選ぶ問題でした。
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『119番通報をしてから救急車が到着するまでには全国平均で約9分間かかる』という文章は
○×の形式で出されて○が正解でした。因みに札幌では約7分、北広島は約8.6分だそうです。
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胸骨圧迫を1分間に100~120回のペースでやって、胸骨圧迫30回と人工呼吸2回を組み
合せてやるとよいことは選択問題で出されました。少しずつ数値が変えられていました。
これらは一般的な目安ではありますが、一次救命処置をする上では意識して正確に覚えて
おくべきです。ただ特に紛らわしくて意地悪と感じる選択肢は無くて答え易かったです。
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倒れている傷病者に対して普段どおりの呼吸があるかどうか?を確認するのは胸と腹部の
上がり下がりを見ながら10秒以内で判断するようにすることは○×問題で出されました。
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胸骨圧迫の正しいやり方は四肢択一の選択問題で聞かれました。胸の右や左の部分を圧迫
して押すのではなくて必ず真ん中にある胸骨の下半分の部分を、両手を重ねて組んで力を
集中させながら強く、速く、絶え間なく圧迫することが大切です。余談ですが、高齢者は
圧迫を始めるとバキバキッと音がして骨折したりしますが、そこでひるんではいけなくて
そこからが心肺蘇生では勝負になると講師の方が真剣に教えて下さいました。その骨折は
傷害罪に問われたりはしないので、安心して勇気をもって胸骨圧迫をやり続けて下さい。
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口対口の人工呼吸のやり方は1秒かけて息を吹き込んで、傷病者の胸が上がることを確認
して1度に2回やるように決められてます。これは○×問題で質問されて○が正解でした。
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人工呼吸を省略して胸骨圧迫だけを継続するのはどんな場合なのか?については○×問題
で出されました。見ず知らずの関係でいきなり口対口の人工呼吸は抵抗感が大きいです。
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傷病者に対して救助者が2人以上いる場合には1~2分間程度を目安にして胸骨圧迫を交代で
実施するようにすることは○×問題で出題されました。30回程度でも胸骨圧迫は疲れます。
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AEDのフタを開けて電極パッドを貼り付けた後は心電図の解析が自動で始まり、その際に
『傷病者に触れないで離れて下さい!』と伝えるべきことは○×問題で質問されてました。
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AEDを使っていて電気ショックを行なうと、それで安心してしまってその後の動作が停止
してしまうことがありますが、すぐ胸骨圧迫を再開するようにと○×問題で問われました。
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救助者が心肺蘇生を中止するのはどんな場合なのか?は○×問題で聞かれました。目を開け
たり、うめき声を出したり、目的がある動作をしたり、通常の呼吸を再開した時とかです。
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AEDの電極パッドを貼る位置は注意が必要です。貼り薬があったらはがして薬を拭き取り、
医療機器が埋め込まれてたら3cm程度離して、また手術痕があったら5cm離しておきます。
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胸部突き上げ法を実行するのはどんなケースか?は四肢択一の選択問題で出されました。
高齢者が異物を喉につまらせた際に意識があり、周りに質問されて『窒息している』と首
を縦に振って答えた場合にどうするか?を選択して答えました。意識があるので人工呼吸
や胸骨圧迫はせずに速やかに胸部突き上げ法を実施して吐き出させるようにすべきです。
因みに異物を喉につまらせて意識が無くなったら、すぐ胸骨圧迫をします。それによって
異物を勢いよく吐き出して呼吸が再開したりして、一石二鳥で回復する場面があります。
以上のような感じで、教師の方から事前に伝えられてた項目だけが選択問題と○×問題に
アレンジされてそれぞれ10題ずつ出題されました。確認さえしていれば満点を取れます。
余談ですが、20題中でいくつ間違うと不合格になり、上級救命講習の修了証をもらえなく
なるのか?の基準は講師の方から教えてもらえませんでしたが、内々では存在しそうです。
とにかく座学の講義中に起きていて消防署員の担当の方から言われた箇所をチェックして
内容を理解して軽く記憶しておくだけで筆記の効果測定は簡単に合格できるものでした。
実技の効果測定
筆記の効果測定の後に実技の効果測定がありました。今回は受講生が10名で、防災研修室
の中に2つのマットが敷かれてました。そこにそれぞれ人形が1体ずつあり、さらにAEDが
追加で置かれて男女別に分かれて(男性6名と女性4名)実技のテストが行なわれました。
1つのグループに教官が2人ずついて、受講生が1人ずつ名前を呼ばれて心肺蘇生法の流れ
を実演して評価されます。当然ですが、後に名前を呼ばれる程、前の人のパフォーマンス
を見学できて有利になります。著者は6人中の4番目で、落ち着いて冷静に対応しました。
以下の動作の流れを全て覚えておいてセリフ付きで再現できれば問題無く合格できます。
逆に一部の行動を忘れて飛ばしたりすると実技の試験に落ちてしまう可能性があります。
教官と受講生の方達が周りにいる中で演技をするのはどうしても恥ずかしさがありますが
効果測定に合格して上級救命講習の資格を手にする為と割り切って堂々と臨んで下さい。
倒れている人を見つける(『倒れている人がいます!』と声に出して言う)
↓
周囲の安全を確認してから傷病者に近づく(『周囲の安全確認よし!』と周りを指差しながら言う)
↓
反応(意識)があるかどうか?を確認する(『大丈夫ですか?』や『分かりますか?』と両方の肩を叩きながら最初は小さい声で、次に大きい声で話しかけて確かめる)
倒れている人に意識がある場合はいきなり大きい声で話しかけるとびっくりさせてしまう
ことがあり、その事情に配慮して始めは耳元で小さい声で話しかけるようにすべきです。
↓
『誰か来て下さい!人が倒れています!』と大声で助けを呼ぶ
↓
人が来たら『あなたは119番通報をお願いします』や『あなたはAEDの手配をお願いします』と個人に対して具体的に依頼する
↓
胸と腹部を見て約10秒間で呼吸の有無を確認する
↓
頭部後屈あご先挙上法を用いて頭の向きを変えて気道を確保してから胸骨圧迫を始める
↓
連続で30回やったら呼吸の有無をまた確認する(大抵のケースでは人工呼吸はせず、気にしなくてよい)
↓
AEDが到着したら『AEDの使い方は分かりますか?』とその人に質問する
訓練なので持って来た人が『使用方法が分からない』という設定で進行させ、胸骨圧迫を
してる人がAEDのフタを開いて音声メッセージに従って電極パッドを身体に貼りました。
↓
『心電図の解析中なので皆さん、離れて下さい!』と周りに伝える
↓
充電が終わったら『電気ショックを行なって下さい』とメッセージが出て『これから電気
ショックを行ないますので皆さん、離れて下さい!』と周囲の人に伝えて安全を確保する
↓
『電気ショックをします!』と言ってからボタンを1回押す
↓
その後は一次救命処置の動作を止めないですぐに胸骨圧迫を再開する
↓
救急隊員が到着したら、最初に人が倒れていた場面の状況と、自身がした一次救命処置の
内容を伝えて引き継ぎをする(他者が情報を書きとめておいて消防署員に伝えてもよい)
↓
『まだ意識と呼吸が再開されていませんのでこの後は宜しくお願いします!』と伝えて終了
今回の上級救命講習では大声で助けを呼んだ後に呼吸の確認をしないでいきなり胸骨圧迫
をし始めた受講生が2人いて、後でそれを直すようにとフィードバックで伝えられました。
実技のテストについては前の人のパフォーマンスを見学できてしまうことで後の人の方が
圧倒的に有利です。合格ラインはどこらへんなのか?は公表されずに全員が合格でした。
感想とまとめ
今回の上級救命講習は9:30~18:30の予定で出席しましたが、実際は15:30過ぎに修了証
を全員に渡して終わりました。消防署員の方達には緊急の出動を含めて土日祝であっても
通常の業務が容赦なくあります。従って年に1度であっても、余計で付加的な行事である
上級救命講習なんかはできるだけ早く終えてしまいたいというココロの声が聞こえた気が
しました。テキストの内容は全ページを閲覧しましたが、普通救命講習Ⅰの教材とあまり
変わってなくてほぼ同じでした。もう少しテキストの中身を座学でしっかり講義して頂き
たかったという感想が残りました。ただこの上級救命講習は無料のイベントですし、消防
署員の方達のご都合の影響を大きく受けたとしても、受講生の側は文句を言えませんが。
お昼の休憩の1時間を除くと正味5時間程度の講習会でしたが、日常で消防の現場で活躍を
されてる隊員の方達から生の声を色々と聞くことができて大変に貴重で楽しい機会でした。
一般の方にとって意識と呼吸が無い傷病者に街中で遭遇する頻度は『一生に一度、あるか
ないか』くらいですが、今回得た有意義な知識と経験を今後の人生で活かしていきます。
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